へき地に届け! 塾ライブのその後――

以前、私が関わっているプロジェクトの一つとして、塾がないへき地の子供たちに教育を届けるための「塾ライブ」立ち上げについて記事を書かせてもらった。みなさんのご支援もあり、クラウドファンディングは目標額に達し、現在システムを構築中である。

おおむね仕上がったということで、レビューのための会議をしたところ、それぞれの意見がかみ合わず、システムの再構築となってしまった。人の頭の中のイメージは他人にはわからない。実際にでき上がったものを見てみなければわからないことが多くあった。伝えていたつもり、わかっていたつもり、でも仕上がったものは理想と違う。

細かいことも逐一報告、確認が必要だと感じた。いまよりもっと生徒が使いやすくなるように、話し合に話し合いを重ね、私たちは再度プログラムを組み直すことにした。予定よりかなりリリースが遅れるが、使い勝手が悪いものを世に送り出したとしても誰の気持ちも浮かばれない。失敗を教訓として再構築を進めている。本プロジェクトのリリースは6月1日となる。

そして、新型コロナウイルス感染症予防のための“学校一斉休校ドタバタ劇”から、早1年が経とうとしている。この間にオンラインを使った教育システムが数多くリリースされた。大手の塾や通信教育がオンラインを謳い文句にし、たくさんのオンライン授業が世に送り出されている。このように猫も杓子もオンライン授業となれば、私たちの小さなプロジェクトは誰の目にも止まらない。私たちの強みをしっかり打ち出し、生徒や保護者の目に留まらなければ救えるものも救えない。

そこで私たちは志望大学に特化したクラスルームを作ることにした。そうすることでより、クラスルーム内の目標が明確となり、子供たちの団結力も強まる。普段の塾で指導をしていても、実際に同じ志望校同士の生徒は仲が良い。教え合いのときに同じペアにすることが多いということもあるが、せっかく一緒に学んだ仲間なのだから、一緒に合格したい!という気持ちが芽生えるようだ。

それだけではなく、担任になる先生も目標大学に詳しい先生や、実際に卒業した先生を選出する予定だ。そうすることで、より具体的な学校の雰囲気や仕組みを子供たちに伝えることができ、子供たちもイメージしやすい。担任の先生も自分の出身校であればアドバイスしやすい。お互いに良い関係を築いてもらえると思う。最初はクラスの成立する志望校が限定される感があるが、先生をどんどん増やしていく予定なので問題ない。

今回のシステム再構築の話し合いは長崎の平戸で行われた。都会に住んでいる私たちでは気が付かない視点でシステムを見てもらうためだ。やはり地方では自分が行きたい大学の出身者と話す機会がないという。子供たちは、よくわからないけど、学校から偏差値で決められた大学を選ぶことが多いという。私たちのこのシステムを使うことで、自分の行きたい大学がより身近なものになってくれると良いと思う。

実際、今回の平戸会議には私の娘も同行した。そして偶然にも、娘が第2志望にしている大学に通う大学生が、会議に出席してくれていたのだ。娘はその大学生に、実際の大学生活の様子についていろいろ質問したようだった。授業の様子やバイトの様子。学校が休みのときの過ごし方など、HPやネット情報、高校や大学が配布する資料には載らない活きた情報を得ることができ、娘はますますその大学を受験したくなったと嬉しそうに話してくれた。

志望校別に担当やクラスルームを編成することで、机上だけでない活きた情報も提供できるようになる。これは他の大手のオンライン授業の体制では不可能だ。私たちは小さいけれど、子供たち一人ひとりが受験すらも楽しめるようなコンテンツを提供したいと思っている。

この記事を書いたひと

松本 正美
(まつもと まさみ)

「学ぶ力は、夢を叶える力!」松島修楽館代表。中学3年生の時に「将来は塾の先生になる!」と決意し、大学1年生から大手個別指導塾で教務に就く。卒業後、そのまま室長として10年間勤務。その後、新興のインターネット予備校で生徒サポートの仕事に携わった後、2013年に松島修楽館を開業。単なるテストのための勉強だけではなく、「どんな夢でも、正しい努力によって叶えることができる」ということを子供たちに伝えるため、根本的な「学ぶ力」を育むことを重視した指導を行っている。2人の高校生の母。趣味はサックス、タップダンス。