【授業のためのICT入門】オンラインミーティングを考える

2022年7月29日

新型コロナウィルスの感染対策のため、今年は中学、高等学校の生徒総会をオンラインで開催した学校が多く見受けられました。例えば、Wi-Fi(無線LAN)接続されたタブレットを各教室にある大型電子黒板につないで、Google Meetなどのオンラインミーティングツールを使って全教室から参加するという形です。

生徒会役員や各委員会は、会議室などに集まり、映像・音声を配信します。各教室側は、タブレットのカメラとマイクを使い、役員の生徒たちと双方向通信を行うのです。こうしたオンラインでのやりとりは生徒総会だけでなく、様々な集会や学校全体の授業などでも利用することができます。

先日私が訪問した中学校の情報リテラシー講座では、私(講師)がいる会議室と各教室を校内LANでつないだ形で行いました。教室は1台のタブレットを大型テレビにつなぐのですが、カメラを教室側に向けてみなさんの反応を確認しながら私が話すといった具合です。Googleのスライド(プレゼンテーションアプリ)を使って画面共有をしながらお話をしました。

画面の向こうでグループディスカッションなどを行ってもらうことも可能ですが、対面の授業と明らかに違う点は質疑応答にありました。教室に1台なので、質問がある生徒は席を立ってタブレットの前に来て、私に話しかけなければならないのです。これはだいぶハードルが高いことです。

「質問は?」の問いかけに微妙な空気(オンラインでもわかるほど!)が流れ、結局誰も手をあげることはありませんでした。1人1台のタブレットを使い、イヤホンマイクなどを使ってハウリングを防いだ状態で全員参加すれば、もう少し違ったのかなと思いますが、反対に参加人数が多すぎて使用最大人数(Google Meetの場合は100名)を超えてしまいます。なかなか「全員参加」を実現することは難しいのだなと感じました。

話を生徒総会に戻しましょう。実は生徒総会でも同じことが起こります。生徒会役員や各委員会委員長の議事の上程や報告などを、オンラインで行うことはもちろん可能です。画面共有をすれば、手元の資料で見るよりもわかりやすい説明を受けることができるでしょう。しかし、そのあとの質疑応答はいかがでしょうか。

体育館で行う生徒総会で質問をするというのもなかなかの勇気ですが、顔が大きく映るオンライン対話で質問をすることができる生徒はどのくらいいるでしょうか。そうしたことを想定すると、「しっかりとした報告・プレゼン」はできても、「活発な意見交換」にはならないということがわかるのです。それでも、生徒総会の実施は必要です。何とか実施しなければなりません。では、どうしたら実りある会にすることができるのでしょう。

例えば、質疑応答が難しいということが課題であった場合、実施に際していくつかの方法があります。

  • 事前に質問を受け付けて納得のいくまでやり取りをおこない、その経緯と結果を総会で報告する
  • 質問ができるだけでないように緻密な資料を作成して事前に配布、意見や質問も事前提出とする(質問の回答を事前にするかどうかも決める)
  • チャットやメールの機能を使って当日総会中に質疑応答をやり取りする

他にもあるかもしれません。また、どの方法が良いかということもわかりません。こういった計画を生徒たちが自分で立てるということが大切です。

文科省の学習指導要綱「生徒会活動」の項目では、

「生徒会活動を通して,望ましい人間関係を形成し,集団や社会の一員としてよりよい学校生活づくりに参画し,協力して諸問題を解決しようとする自主的,実践的な態度を育てる」

文部省学習指導要綱「生徒会活動」

との記述があります。指導計画の項目にも、

「生徒の自発的,自治的な活動が効果的に展開されるようにするとともに,内容相互の関連を図るよう工夫すること。また,よりよい生活を築くために集団としての意見をまとめるなどの話合い活動や自分たちできまりをつくって守る活動,人間関係を形成する力を養う活動などを充実するよう工夫すること」

文部省学習指導要綱「生徒会活動」

とあります。オンラインが導入されたことにより、まさにこの取り組みを具体的に行うことができるのです。

同時に、その行事を「本当にオンラインで行う必要があるのか」ということを検討することもできます。先ほどの質疑応答のように、オンラインで行う方が対面での実施よりも手間がかかることがあります。手間をかけてもオンラインで行った方が良いもの、工夫をすることで、オンラインではなくて対面で実施することができるもの、対面のほうが結果的に実施が容易であるもの――すべては「なぜその行事を行う必要があるのか」「生徒会活動とは何なのか」ということを生徒自身が考え、プランを立てて実行していくということにつながります。

私たちはオンラインという新しい選択肢を得ることができました。新型コロナの感染への警戒が少し収まったとしても、オンラインがなくなることはもうありません。状況や場面に応じた使い分けをできることが、これからの情報リテラシーとなっていくことだと思います。

この記事を書いたひと

ライター:吉田理子様

吉田 理子
(よしだ りこ)

1971年生まれ。Windows95発売当時に社会人となり、以降パソコン教室講師やITサポート等の仕事に従事。2005年に企業・学校向けのIT、情報教育を目的とした企業組合i-casket設立。2018年には一般社団法人s-netサポーターズを設立し、主に小中学校にて子供・保護者・教員向けの情報リテラシー、プログラミング的思考に関する講座を行う。そのほか地域ボランティアや主権者教育の活動をボランティアで。趣味は料理と読書。