子育てはアウトソーシングしようよ!

2022年7月29日

私の前職は教師。子どものときから小さな子の世話をするのが好きで、高校教師になってからも自分より体の大きな生徒のことでさえかわいいと思っていた。だから自分は「子ども好き」と信じて疑わなかったし、早く自分の子どもが欲しいと思っていた。

ところが、実際に生まれた息子を見て心底驚いた。「赤ちゃんって動物だ!」。実は私は動物が好きではない。餌をやるのも、トイレの世話をするのもごめんだし、何より言葉を生業としている身にとって「言葉が通じない」相手はストレスでしかないのだ。それなのに生まれてきた息子は授乳しないといけないし、おむつを替えてやらないといけない。当然のことながら言葉も通じない。

私は生まれたばかりの息子を抱えて途方に暮れた。「私、子育てに向いてない……」。その思いは息子の成長と共にさらに膨らんだ。なぜかというと、私は野外もまた好きではないのだ。ところが、子どもときたらすぐに外遊びをしたがる。教職に就いていたので、子どもの発育に外遊びが大切なことはよくわかっている。だから、しぶしぶ公園には行っていたが、本当に苦痛でしかなかった。

おいしいご飯を食べるのは好きだけれど、料理や片づけは苦手という人がいるのと同じように、私は息子のことは愛しているけれど、身の回りの世話や一緒に外で遊ぶのが苦手なのだ!!!

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こんな調子で母親業を数年するうちに、自分の苦手分野は人にお願いしようと思うようになった。

例えば山登り。息子には自然に触れさせたいが、私は山登りが嫌い。だから、友達が山登りに行くと聞けば、すぐさま息子を連れて行ってくれるようお願いする。私は、ふもとにいて、降りてきた友達に差し入れを渡してお礼を言うだけ。

昨年の無人島キャンプ。息子はどうしても行きたいと言うが、夫は行けないと言う。だったら私が連れて行くしかないのだが、苦手な野外で息子の面倒を見る自信がない。だから、アウトドア好きな友達に一緒に行ってくれるようお願いした。私は友達とはしゃぐ息子を見ながらビールを飲んでいた。

こんな感じで、これまでいろいろな人にいろいろなことをお願いしたけれど、断られたことはほとんどない。そして、私もこうした頼まれごとを断ったことはない。みんな持ちつ持たれつでいいと思っているから。

そもそも世の中の母親は頑張りすぎだ。ただでさえ日本の女性の家事労働時間は長いのに、それに加えて仕事や育児を“すべて”自分でやろうなんて不可能に近い。自分が苦手なことを頑張ってイライラするくらいなら、誰かにお願いするという選択肢を持つべきだ。私は子育てをアウトソーシングするという発想を持つようになって、精神的にも体力的にもずいぶん楽になった。

しかし、この話を幼児教育の専門家である知人に話したら、「それをできないお母さんが多い。そういうことをすると『手を抜いていると思われる』『私は母親失格だ』と思ってしまうらしい」と言われた。それは妄想だ。昔から「親はなくとも子は育つ」と言われているし、なんでも実の親が頑張る必要なんてまったくないのだ。

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子育てのアウトソーシングのメリットは、母親の気持ちに余裕が出ることの他にもう一つある。それは子どもの世界が広がることだ。

上述の山登りで、息子は私の友達といろいろな動植物の話をしたらしく、帰宅して図鑑で調べ物をしていた。植物はともかく動物が嫌いな私と山登りをしていたら、そんなふうに興味関心を引き出してやれなかっただろう。

親が知っていること、経験したことなんてたかが知れている。だから、子どもにもっと広い世界を見せるという意味でも、子育てのアウトソーシングを勧めたい。子どもにとって、親や先生以外の大人と触れ合うことはこの上ない経験になる。

この記事を書いたひと

ライター:木下真紀子様

木下 真紀子
(きのした まきこ)

コンセプトライター。14年間公立高校の国語教諭を務め、長男出産後退職。フリーランスとなる。教員時代のモットーは、生徒に「大人になるって楽しいことだ」と背中で語ること。それは子育てをしている今も変わらない。すべての子どもが大人になることに夢を持てる社会にしたいという思いが根底にある。また、無類の台湾好き。2004年に初めて訪れた台湾で人に惚れ込み、2013年に子連れ語学留学を果たす。2029年には台湾に単身移住予定。