【親になるということ】「早寝早起き」から考える共通概念の導き方

今年も就学時検診の季節です。すでに複数個所の学校で家庭教育についてのお話をしておりますが、なるほど少し難しいなと思うことがありました。それは共通概念の問題です。

例えば私は小学校1年生に上がるまでに、「早寝早起き」の習慣を身につけましょうという話をします。毎朝同じ時間に起きて、学校に行く支度を自分でできるようになることは、小学生になるうえでとても大切な習慣です。早く起きるためには、早く寝る。単純なことのように思いますが、この伝え方が難しいのです。つまり「基本的な生活習慣」という概念です。

基本的な生活習慣と言われて、早寝早起きと答えることは簡単ですが、じゃあ早寝って何時? 早起きって何時? と聞かれると、ちょっと言葉に詰まってしまうのではないでしょうか。学校の先生方と打ち合わせをしていても、「当たり前のように使っている言葉の意味を、お互い共通の概念で認識しているかな?」と思うことがしばしばあるので、私が使っている言葉も、聞いている保護者の人にどう伝わっているのか……と考えてしまったということです。

早寝早起きについてもう少しこだわってみましょう。早起きはなんとなくわかります。それは、学校に行く時間が決まっているからです。例えばまず、7時45分に学校に着くためには家を何時に出ればよいかな?と考えます。私の家の場合はとても学校が近いので、45分に着くならば子どもの足でも10分かかりません。余裕を見て15分と考えると、7時半に家を出る、ということになります。

すると、7時半に家を出られるようにするには、何時までに支度が終わって、何時までにご飯を食べ終わって……と逆算することができるのです。我が家の場合で言うと、25分までに支度を終えるには7時にはご飯を食べ終わっていたい(持ち物のチェックが大変な子だったので)、すると、6時半には起きて、落ち着いて食事をとるようにする……ということになります。家が学校から遠いとか、地階の問題を考えても、だいたい6時から6時半くらいに起きるのが一般的、つまり基本的な起床時間になるのではないでしょうか。

これに対して早寝はどうでしょうか。学校の先生に伺うと「3年生くらいまではやはり夜の9時には寝てほしい」という返事が返ってきます。納得です。それなら6時半に起きることもできるでしょう。ですが、この9時に寝るということからまた逆算していくと……寝るまでには夕飯を食べて、お風呂に入って、宿題をやって、寝る支度をしてというスケジュールになります。これに習い事が入ってきたりするとどうでしょう。仕事を終えた親が9時までに子どもを寝かせるのは、けっこう大変なことではないでしょうか。たぶん、9時に寝かせられる家はいまどきそんなに多くないのではないかな、と思ったりもします。

別に私は9時に寝ることを否定しているのではありません。でも、早寝早起きという話が出たときに「子どもは9時に寝るのが当然よね」と言われると、納得できないのではないかなと思うのです。それができていない自分が悪いのか……と考えてしまうかもしれませんね。

共通概念というのは本当に難しくて、自分以外の人と話すときはすべて本当の意味は伝わらないと考えたほうがよいくらいだと思います。早寝早起きの話は自分や義理の両親との会話だけでなく、同じ子育て中の保護者同士、学校の先生、そして私のような講師の話でもすべて認識が違っている場合がありますし、それは生活習慣に限ったことではありません。ですから、もし何か言われて「え?」と思ってしまったら、落ち込んだり怒ったりする前にちょっと深呼吸して考えていただきたいのです。

ひと呼吸おいて考えてほしいこと

  1. (例えば)自分の家の環境では9時に子どもを寝かすことが難しい理由
  2. 9時が難しいことがわかっているので、どのような工夫をしているか
  3. そもそも、子育ての中で何を大切にしているか

1は、仕事の都合、習い事の都合、いろいろとあると思います。具体的に挙げてみましょう。別に言い訳はしなくていいのです。事実を考えます。2は、自分が頑張っていることを考えます。誰だって子どもが深夜まで起きていることが良いとは思っていません。自分だってわかっているけれど難しい。だから平日はバタバタで夕飯もお風呂も大急ぎで片づけているけれど、土日は意識してゆっくりするようにしているとか、少しでも家事の時間を減らすようにおかずを1週間分作り置きしている、などです。

そして最後に3を考えます。自分たちの家族が揃うのはどうしても夜7時半以降になってしまう。子どもを早く寝かせることは大事だけれど、その時間を叱りながら守らせるより、イライラしないで自分たちの生活に合った規則正しい時間を過ごせるようにしている、という具合です。

自分たちには自分たちの生活環境と考えがある、理由があるということを自覚できると、自信が出てくるので落ち着いて相手の言うことを聞くことができます。そのうえで「そうなんですよ、わかっているのですが難しいですね、うちはこういう工夫をしているのですが」と切り返せば、相手も「そうですね、難しいですね、みんな忙しいですから、どうしたらよいでしょうね」と、一緒に対策を考える話に方向性が変わってくると思います。ここで初めて、「子どもが早く寝ることは大切」という共通認識が生まれるのではないでしょうか。

同じ言葉を話していても、最初から共通の認識ではないということをお互い自覚して話を進めると、世代が違う人たち、また親子の間での感情からくるトラブルは少なくなるのかもしれません。

この記事を書いたひと

ライター:吉田理子様

吉田 理子
(よしだ りこ)

1971年生まれ。Windows95発売当時に社会人となり、以降パソコン教室講師やITサポート等の仕事に従事。2005年に企業・学校向けのIT、情報教育を目的とした企業組合i-casket設立。2018年には一般社団法人s-netサポーターズを設立し、主に小中学校にて子ども・保護者・教員向けの情報リテラシー、プログラミング的思考に関する講座を行う。そのほか地域ボランティアや主権者教育の活動をボランティアで。趣味は料理と読書。