【親になるということ】個を尊重し、『多様性』の受け入れにつなげる

先日、家庭教育アドバイザーの研修で、LGBTの方のお話を伺いました。
幼少期から自分の性別に関する違和感をもってきたという体験から、自分とどう向き合ったか、周囲、特に家族や友人の反応はどうであったかということを、しっかりとお話していただきました。

そのとき私が感じたのは、「話を聞いた家族は最初どう思ったのだろうか、そしてどう子どもの想いを受け入れたのだろうか」「自分だったらどう感じ、行動するのだろうか」ということです。

LGBTだけの話ではありませんが、「多様性を受け入れる」ということの重要性と、難しさを教えていただいたのだと思います。

私たちは簡単に「多様性」という言葉を使います。
特にSDGsという言葉が広まっている近年では、多様性を受け入れることがとても大切だと言われています。

しかし実際のところ、自分とは違う誰かを受け入れるということは本当に難しくて、いつでもそれができるかといったら自信をもって「はい」とは言えないことが多いのです。

子育てにおいて、「多様性を受け入れる」という言葉と、「個性を尊重する」という言葉の使われ方は少し似ているような気がします。

たとえば「勉強をしたくない」という子どもが言い出したとき、私たちはどう対応するでしょうか。

考えられる対応

  1. 無理やり勉強をさせる(塾に行かせたり、ドリルを与えたりして監視する)
  2. なぜ勉強したくないのかを(問い詰めるのではなく)聞いて、自分(親)がなぜ勉強してほしいのかを説明し、子どもに決めさせる(年齢や状況によっては一緒に決める)
  3. うちの子は勉強しないのだとあきらめる

「学校の授業についていけなかったらどうしよう」といった不安や、「学校でいじめられたりしないだろうか」などと周囲に評価されることへの恐れもあるでしょう。

勉強をしっかりやって、賢く育ってほしいと願ってしまう親の気持ちは大変よくわかりますが、だからといって「勉強しなさい」としつこく言ったとしても、子どもが心から納得していないことが分かる以上、強制ができるものでもありません。

ですから、「無理やりさせる」という1の選択肢は、子どもを尊重している対応とは言えないでしょう。

2と3が迷うところです。
2と3については、子どもを尊重するという点で、一概に、どちらが正しい、間違っているとはいいがたいものです。

ただし、3の場合は『子どもに興味を持たない』……ということではない、という注釈が入ります。
子どもの意思を尊重するということはとても大事ですが、⼦どもを尊重するということと、親がなんでも許す、もしくは諦めるということは違います。

『⾃由』と『⾃由放任』は別のもので、自由放任は、子育てを放棄することにつながります。

子どもを尊重する子育ては、子どもの行動を親が黙って我慢するということではないのです。

では、どうしたら子どもを尊重するということになるのでしょうか。
先の例でいえば、2番の「なぜ勉強したくないのか」を、まずは子どもに聞くということです。

勉強しろと口を出すのを「我慢」するのではなく、親が子どもを見る視点を変える。
つまり、「なぜ勉強したくないのだろう?」ということを観察することからはじめるのです。

期待や不安など、親の価値観を通して子どもを見てしまうと、自分が口を出さないことを「我慢」と自覚してしまうので、親のストレスがたまります。

そうならないために、『子どものありのままを観察する』ことで子どもの行動にも理由があるのだということを親が理解していく。

そのうえで自分の意見も伝え、子どもと対話をし、結論を出すという作業を通すことで、子どもも「自分の意見を聞いてくれた」「自分と向き合ってくれた」と感じ、自分が尊重されていると理解するのです。

ただ、ここで親に求められるものがあります。
それは「我慢」ではなく「覚悟」ということです。

覚悟とは、話し合いの結果「勉強をしない」という選択肢になったときに、それを受け入れるということです。

親としては絶対に避けたいところ。
そして子どもにとっては100%要求がかなった結果となりますが、これが受け入れられるかどうかは我慢よりもキツイですね。

でも、それでも。話し合いの結果ならば、受け入れる。
それが多様性を受け入れることにつながるのかなと思います。

まあ、今回の例でいうならば。『勉強をしない』という結論にもっていかせないために、親も必死で説得をするわけですが、大人の本気の説得を子どもは論破できません(あくまで、論理的に話すということが前提ですが)。

親が説得に使った語彙をはじめとする知識は、勉強しないと手に入らないものですから、結局子どもは(その時はわからなくても)なぜ勉強するのかということが分かるのではないかな……と思ったりします。

大切なのは、子どもの行動に感情的にならないということ、行動には理由があり、その理由を観察することで、自分と違う、自分の思うようにならない相手のことを理解することです。

子どものうちからこうした経験を家庭でしていれば、子どもも自然と他者に対する関わり方が変わり、例えば外国人のお友達や障がいがあるお友達に対して、自分と違うことを理解し、受け入れるということができるようになるでしょう。個の尊重が多様性の受け入れにつながるのです。

この記事を書いたひと

ライター:吉田理子様

吉田 理子
(よしだ りこ)

1971年生まれ。Windows95発売当時に社会人となり、以降パソコン教室講師やITサポート等の仕事に従事。2005年に企業・学校向けのIT、情報教育を目的とした企業組合i-casket設立。2018年には一般社団法人s-netサポーターズを設立し、主に小中学校にて子供・保護者・教員向けの情報リテラシー、プログラミング的思考に関する講座を行う。そのほか地域ボランティアや主権者教育の活動をボランティアで。趣味は料理と読書。