【親になるということ】客観的な視点で子どもをみる

先日、子どものアート体験の会にボランティアとしてお手伝いに行きました。

大きな会場にいくつかブースがあって、子ども達はその中からやりたいことを選んで作品をつくるのです。水引やクラフトバンド、バルーンアートにパステルアートと、大人でもどれにしようか迷ってしまいそうな中で、私はパステルアートのお手伝いでした。

パステルアートでは、クリスマスカードを作るのですが、一人ひとりにこだわりがあったり、悩んだり、反対にすぐに決定して完成したりとさまざまな子がいました。

こういうとき、自分の子どもが体験しているときと、ほかの人の子どものときとでは、自分の気持ちが違うな…と思います。

自分の子どものときは、選ぶ色や手つき、そして時間内に終わるかどうかにソワソワして、ゆったりとした気持ちになれません。しかし、ほかの子のときは悩んでいても、変な(と私が感じる)場所に想定外の何かを描いていても、時間内に終わらなくても、穏やかに、楽しい気持ちで見ることができ、出来上がった作品を心から褒めることができるのです。

そんな視点で見ていると、ほかの人の関わり方が気になりました。ボランティアには、学生さんたちもたくさん来ていて、子ども達のサポートをします。しかしよく見ていると、「(紙の空いている場所を指さして)ここはどうするの?」とか、「シールはどこに貼ろうか?」とか、「葉っぱの色は緑だね」などと声掛けをしているのです。

アート体験は、上手な作品をつくることが目的ではありません。子どもが自分で考えて、思うようにつくっていく、自分を表現することの体験だと思います。ゆっくりと待っていると、ちゃんと「彼らの世界」を凝縮した素敵な作品を完成させます。

本来はその工程を如何にサポートするか…が私たち大人の役割なので、あれこれ指示を出してはいけないのです。指示してしまう学生さんたちが悪いのではなく、子ども達と歳が近い彼らの中にも、すでに「見本と同じようにつくる」ことが刷り込まれているから、自分たちがされたように子ども達に接するのだなと思いました。

そこで冒頭に戻ります。

私は、他人の子どもだったら、体験の目的を理解し、ゆったりとした気持ちで関わることができます。

しかし、自分の子どもだと、それがうまくできません。
自分の子どもの行為はそのまま自分自身への評価(誰がするわけでもありませんが)につながると感じているので、完成度の高い作品にしたいと思うし、時間内にきっちり終わらせたいと思うのでしょう。この「主観的な」思い込みをなくす努力が必要なのだと思います。

これは、アートだけではありません。言われなくても自主学習に取り組む、規則正しい生活をする、学校の授業で指されたら大きな声でしっかりと発言をするなど、子どもに「期待」する場面はたくさんあります。

それがうまくできないとき、私たちはどう感じ、どう子どもに伝えるでしょうか。

主観的に感じれば、イライラするし、焦ったり、恥ずかしくなったりします。

「子どものため」と思えばこそのイライラだ、と自分に言い聞かせ、子どもを「指導」します。今これを教えておいた方が子どものためになると思うからこその発言だと理由をつけるのです。

そのすべてが悪いとは思いませんが、イラっときたり、焦ったりしたら、少しだけ「客観的」になってみましょう。自分の子ども以外の子どもに接するとき、自分はどうするかなと考えてみましょう(うちの子以外は関係ない、というのはなしですよ)。

少し余裕をもって、その子がどういう動きを見せるのか、何を悩んでいるのかを見守りましょう。彼らの時間を彼らのために使うお手伝いをすることが、子どもたちの自主性を育てることにつながるのだと思います。

おもしろいと思うのですが、素早くできる子が上手とも限りません。私などはこのタイプで、なんでも素早いのですがその分抜けているというか、おおざっぱな感じで取り組んでしまいます。

「遅い!」と感じるほどゆっくりと取り組んでいるからといって不器用なわけではありません。丁寧に取り組んでいるから時間がかかることもあるのです。

でも、チャカチャカ終わらせてしまう子は心のどこかで反省をし、次はもっと落ち着いて取り組もうと思うこともあるでしょう。ゆっくりしすぎていた子は、今度はもう少し早く、時間内に作ろうと思う可能性もあります。

体験を繰り返すことで内省を続け、徐々に「自分のスタイル」を確立していくのだと思いますし、その過程がとても重要だと思います。

子どもに接しているときに、自分以外の子どもと触れることは、自分が子どもをどういう目で見ているかを知ることにつながります。自分の子どもに対して客観的な視点を持つことができるようにするためにもぜひ、何かの機会に体験してみてください。

この記事を書いたひと

ライター:吉田理子様

吉田 理子
(よしだ りこ)

1971年生まれ。Windows95発売当時に社会人となり、以降パソコン教室講師やITサポート等の仕事に従事。2005年に企業・学校向けのIT、情報教育を目的とした企業組合i-casket設立。2018年には一般社団法人s-netサポーターズを設立し、主に小中学校にて子供・保護者・教員向けの情報リテラシー、プログラミング的思考に関する講座を行う。そのほか地域ボランティアや主権者教育の活動をボランティアで。趣味は料理と読書。