【STEAM教育②】教育が変わらざるを得ない理由は?STEAM教育で育てたいものとは…

データの逆流現象

「地磁気逆転」という現象を聞いたことがあるでしょうか。

360万年という地球の長い歴史の中で、過去に11回は南北の地磁気が逆転していることが分かっています。見た目上はなにも変わらないにも関わらず、地磁気の極の南北が入れ替わっているのです。

これと同じようなことが、いまの社会で起こっているように私には見えます。
そのひとつがデータの逆流です。

「Society4.0」の情報化社会も、「Society5.0」と言われる今の社会も、IT社会です。
スマートフォンの普及やIoTなど、IT端末の量がけた違いに増えています。

たとえば会社に行けばパソコンを開き、メールを処理し、データを整理し、書類を整える…といったように、私たちの行動そのものは、そこまで劇的に変化しているようには思えません。

しかしSociety4.0とSociety5.0には明確な違いがあります。
それはデータの流れ方が反転しているということです。

情報化社会におけるIT化・システム導入とは、手もとにあるアナログ(書面)データを、システム入力によりデジタルデータ化し、一元管理することを意味していました。いまでもまだ手もとにアナログデータは存在しますが、アナログデータとは桁が違う量のデータが、クラウド上に存在します。

データを処理するという行為が、
「アナログデータをデジタルデータに変換させつつシステムに蓄積させて一元管理する」という行為から

「ビッグデータを含むクラウド上のデータを手もとに呼び出して、データを整える」
という行為に変わっているのです。

このデータの流れの反転が重要な意味を持ちます。

アナログデータを処理するとき、このアナログデータはフォーマットに沿って、つまりある価値に基づいて取りそろえられたデータです。価値の選択や判断は、フォーマットを整えるときにされており、データを処理する人間が価値判断をすることはありません。

しかしクラウド上に存在するデータ、とくにビッグデータというのは無差別に、雑然と、さまざまな形式で蓄積されています。これらのデータを扱おうとすると、このデータを処理する人間の価値基準や力量に応じて整えられるデータが変わってくるのです。

このデータの流れの反転は、どこにいる人間に、どのような力が必要か?というコミュニティの社会体制を大きく変えます。

STEAM教育がいま重要視されている理由の一端であり、教育が大きく変わろうとしている理由のひとつだと考えられます。

データが中央集権構造から自律分散型構造へ

いま、WEB3.0と言われるインターネット活用技術の変化が起きています。

ビットコインに代表されるブロックチェーン技術(ネットワーク上にある端末同士を直接接続し、一箇所ではなく分散させて取引のすべてを暗号技術を使って処理・記録する技術)などが、WEB3.0の具体的変化と捉えられています。

イメージイラスト
「ブロックチェーン」イメージ

基本的な構造は、中央集権的社会から自律分散型社会への変化のWEB上での現象だと捉えられます。

『データの逆転現象』で話したように、アナログデータを整えるときには、フォーマットを整えた人間が価値基準を示し、その価値基準に基づいてデータを整えていくのがデータの扱い方でした。

しかし今はデータを直接処理する人間が、それぞれの価値基準に基づいてデータを整えていくようになっています。

Society4.0のデータ一元管理システムが限界を迎え、データがクラウド上に、さまざまなビッグデータとして存在していることも、中央集権構造から自律分散型構造への変化と見てとれます。

この中央集権構造から自律分散構造の社会変化が、教育のカタチを変えざるを得ない理由です。 価値観が多様化し、幸せのカタチがひとつでなくなった今、コミュニティにおける価値を判断するための頭脳を増やす必要があるのです。

データを利用する頭脳が必要である…と言うと、やはり理数系英才教育じゃないかと言われそうですが、ここで必要なのは価値基準を元にデータを活用する技術者ではありません。

必要なのは、価値そのものを見出すことができる価値発見者、価値創造者、価値表現者…いわゆるクリエイターです。クリエイターの育成こそ、教育が変わらざるを得ない理由であり、STEAM教育が注目されている理由です。

この記事を書いたひと

藤井九曜

田畑 豊史
(たばた とよふみ)

学習塾等教育現場で利用するシステムやアプリケーションを開発してきた文系出身アウトドア派のシステムエンジニア。
趣味は登山。娘が小学生のうちに100名山を一緒に登って回ろうと計画。7歳の娘が現在22座登頂。しかしコロナ禍でペースダウン中。