【親になるということ】子どもを「世話する」と「育てる」の違いとは?

2021年1月14日

 子どもを産んだ瞬間、私たちは親になります。「出産」という行為がない男性も、「お母さん」が子どもを産んだら必然的に「お父さん」です。これがどういうことか、赤ちゃんが生まれたばかりの状態ではわかりません。なぜなら、赤ちゃんは「お世話」が大変だからです。

 生まれる前の両親学級も、生まれてから入院中に習うことも、退院して市内の検診などで相談することも、みんな基本は「赤ちゃんのお世話」。おむつ替え、授乳、だっこ、寝かしつけ……それらはとても大事なことですが、ある意味「技術」でまかなうことができます。

 私も最初の子ども(二人います)のときは大変でした。授乳をしたあと何ml飲んだか量るためにレンタルで体重計を借りた方がよいだろうかとか、少しでもぐずるようならば何か具合の悪いところはないかと必死に探してみたりだとか、とにかく赤ちゃんの様子が気になります。笑えば安心し、泣けばこちらも泣きたくなって、子どものことしか見ていなかったという記憶しかありません。3か月くらいまではそんな調子だったと思います。

 ですが、だんだん大きくなってくると、いろいろな情報が耳に入ってくるようになります。「読み聞かせはした方がいいらしいよ」「Eテレの〇〇という番組はいいらしいよ」「どこそこの公園では、はだしで遊べる場所があるらしいよ」等々。可愛いわが子のために、良いと思うものは全部試したい。IT系の仕事をしていた関係で2001年には自宅にBフレッツを引いていましたから、毎日パソコンにかじりついて子育て情報を調べていました(当時はまだ今ほどの情報はネット上にありませんでしたが……)。

 そのような調子で幼稚園、小学校と子どもは成長していきましたが、二人目の子どもが小学校2年生のとき、仕事の傍ら、PTA活動に関わるようになりました。それはいわゆる「役員」ではなく、「執行部」でしたが、そこから私の「PTAは何のために存在するのだろう?」という疑問がはじまりました。

 私はPTA反対論者でも、推進派でもありませんから、この話を深堀するつもりはありません。ですが、後年、自分がPTA会長を務めたときに、PTAとは何であるのかという、自分なりの見解を会員(保護者)のみなさんに伝え、一緒に活動をしてもらう必要がでてきました。そのとき、ふと思ったことがあったのです。それが、「親になるということ」。

 繰り返しますが、私たちは子どもを産んで親になります。特に母親は妊娠中の心や体のケア、新生児のお世話についてはたくさん学びます。本もありますし、病院でも教わります。でも、今まで一度も「親になるとはどういうことか」について教えてもらったことはありません。親になるテクニックというものは無いのです。自然と身につくものでもありません。その人が生きてきた環境や人間関係の経験から形作られるものだからだと思います。

 子どもの「世話」をすることと、「育てる」ことは違います。育てるとは、ずっと先の子どもの未来を見据えて関わることです。「心」「体」「知性」「感覚」「倫理観」「コミュニケーション力」「感情」など、子どもを育てていくうえで大切なことはたくさんありますが、とにかく目先の「できる」ことを「大人の感覚」で評価するために子どもたちを追い立てることは、「育てる」ではないのです。私たちは子育てと言いながら、世話だけをしてきていたのではないか。生まれたばかりのときのあの感覚から抜けていないのかもしれません。

 では、どうやったら育てるという感覚になるのか。それが「PTA活動」に関連するのではないかと思いました。執行部側の観点になってしまいますが、面倒だと思いながらも様々な行事に参加し、人と会い、会議をこなす。その一つひとつのことについて「なぜこのこと(事業など)をするのか」というようにとらえると、きちんとそこには意味があり、目的があることがわかります。

 たいていの目的は子どものためではありますが、そこに至るまでのプロセスに、「人を育てる」という体験が含まれており、それは私たち親にとっての学びになると思うのです。ですから、PTAの話を聞かれるとき私は「親が親になるためのトライ&エラーの場所」や、「みんなで一緒に親になっていく場所」といった説明をします。

 誰も教えてくれない。だから一人ではなく、みんなで経験を積もう。わからなかったら聞き、悩んだら相談しよう。そしてその中で「自分の子どもはどんな人間になってほしいか」について考えていければ良いと思っています。

 もちろんPTAでなくても、他にこういう場所があるならばそれで良いと思います。私にとってそこはPTAであっただけです。それは会社かもしれない、趣味のサークルかもしれないし、ご近所仲間かもしれません。

 そしてさらに今私たちを悩ませるのは、子どもを育てていく中で圧倒的に昔と変わったもの、「ICT(Information and Communication Technology 情報通信技術)」との関わりです。

 成長の過程の中で、どうICTを活用していくのか。スマホネイティブの子どもたちが新型コロナウィルスの影響でまったく変わってしまった社会を生きていくために、私たち親が考えるべきことは何か。答えはまだありませんので、みなさんと一緒に考えていきたいと思います。

■この記事を書いたひと
吉田理子(よしだ・りこ)
1971年生まれ。Windows95発売当時に社会人となり、以降パソコン教室講師やITサポート等の仕事に従事。2005年に企業・学校向けのIT、情報教育を目的とした企業組合i-casket設立。2018年には一般社団法人s-netサポーターズを設立し、主に小中学校にて子供・保護者・教員向けの情報リテラシー、プログラミング的思考に関する講座を行う。そのほか地域ボランティアや主権者教育の活動をボランティアで。趣味は料理と読書。