令和5年小学生の被害者数が10年前の3倍、SNSに起因する犯罪被害の実態

小学生のスマートフォン所有率が年々上昇しているなか、SNSをきっかけとして起きる犯罪に巻き込まれる被害児童の低年齢化が進んでいます。

令和6年3月、警察庁が令和5年に起きたSNSをきっかけとする事件において、18歳未満の被害児童数が1,665人であると発表しました。被害児童数は令和元年から4年連続減少していますが、依然として高い水準で推移しています。

SNSに起因するもっとも多かった犯罪

警察庁の調査によると、令和5年18歳未満の子どもを対象にしたSNSに起因する犯罪のうち、もっとも多かったのは児童買春で592人。続いて青少年保護育成条例違反が534人、児童ポルノ違反が290人となっていて、前年と比較するといずれも微減していることが分かります。

SNSに起因する事犯「罪種別の被害児童の推移」
SNSに起因する事犯「罪種別の被害児童の推移」/警察庁(最終閲覧日:2024.3.28)

なお、ここでいうSNSとは通信ゲームを含み、届け出のある出会い系サイトを除いたものを指します。また、SNSに起因する事件とは、SNSを通じて面識のない被疑者と被害児童が知り合い、交際や知人関係等に発展する前に被害にあった場合を指しています。

この調査によると、SNSに起因する被害児童数自体は令和元年をピークに年々減少しています。ただし、殺人や放火のほか、不同意性交等や略取誘拐、不同意わいせつなど重要犯罪等は前年と比較して67人増加しています。

学種別にみた被害児童数、小学生と中学生で増加

SNSに起因する事犯を学種別に見てみると、小学生が139人、中学生が748人、高校生が713人となっています。平成26年からの推移を見ると、高校生の被害数は令和元年をピークに減少している一方で、中学生の被害数は令和2年に一度減少してものの、その後増加傾向にあります。

学種別被害児童数の推移(警察庁)
学種別被害児童数の推移/警察庁(最終閲覧日:2024.3.28)

また、小学生の被害数は前年より25人増えて139人と過去最多となっていて、10年前と比較すると3倍以上増えています。

被害に遭った小学生139人を犯罪別に見ると、児童ポルノが72人、不同意性交が23人、不同意わいせつが19人、青少年保護育成条例違反が12人、略取誘拐が11人、児童買春と面会要求等が各1人となっています。

SNSに起因する被害児童(小学生)の推移
SNSに起因する被害児童(小学生)の推移/警察庁
(最終閲覧日:2024.3.28)

SNSに起因する事犯の最初の投稿を行ったのは?

SNSに起因する事犯において、最初の投稿を行ったのは被害児童の方なのでしょうか、それとも被疑者の方なのでしょうか。

警察庁の調査によると、被害を受けた児童のうち74%にあたる1,235人が自分の方から最初の投稿を行ったと回答。また、最初に投稿したと回答した児童1,235人に投稿内容を確認したところ、援助交際募集がもっとも多く251人(20.3%)、プロフィールのみが218人(17.7%)、趣味・嗜好が149人(12.1%)と続きます。

SNSに起因する投稿
SNSに起因する事犯における最初に投稿した者および投稿内容の内訳/警察庁(最終閲覧日:2024.3.28)

被害に遭った小学生139人に絞ると最初の投稿を自ら行ったのは94人。このうち67人は趣味や日常生活、友だち募集(オンラインゲームを含む)と回答しており、犯罪に巻き込まれるとは考えにくい内容でした。

スマートフォンの所有率、SNSの利用率は?

警察庁は、SNSに起因する事件が増加傾向にある背景には、スマートフォンの所有率の増加および、所有年齢の低年齢化があると考えています。

総務省が令和5年に行った調査によると、モバイル端末の所有率は全体で85.6%。年齢別に見ると小学生にあたる6歳から12歳までのスマートフォン所有率は45.3%となっています。

年齢別モバイル端末の保有状況
年齢階層別モバイル端末の保有状況(令和4年)/総務省(最終閲覧日:2024.3.28)

総務省の調査によると、SNSの利用状況は全年齢で利用率が前年より増加。このうち6歳から12歳までの児童の利用率は41.8%と、前年より5%増加しています。

年齢別SNS利用状況
SNSの利用状況/総務省(最終閲覧日:2024.3.28)

フィルタリングの利用状況

SNSに起因する児童の被害数が増加するなか、平成30年、「青少年インターネット環境整備法」が施行されました。この法律が施行されたことで、18歳未満の青少年がスマートフォンを購入する際に、フィルタリングを利用しない場合には契約時に親権者の同意が必要になりました。

しかし、令和5年に起きたSNSに起因する犯罪の被害児童のうち、フィルタリングを利用していたのは102人と全回答数の1割程度に留まっています。

令和5年における少年非行及び子供の性被害状況をもとに作成

総務省が令和4年に行った調査でも、フィルタリングサービスを利用しているのは、全体の37.8%となっていて、利用していたものの解除した人を含めても利用経験のある割合は約半数に留まっていることが分かります。

フィルタリングサービス利用状況
フィルタリングサービス利用状況/総務省(最終閲覧日:2024.3.28)

同調査において、フィルタリングサービスを実際に利用したことのある人に評価を尋ねたところ、サービスそのものについて全体の74.6%の人が「非常に有益なサービスである」「やや有益なサービスである」と回答しています。特に子どもの年齢が低いほどその割合が高いことが分かりました。

フィルタリングサービスを有益と思うか/総務省(最終閲覧日:2024.3.28)

また、フィルタリングサービスの理解度について質問をしたところ、全体の平均正答率は41.7%でした。全年齢を通して「利用を許可したアプリからアクセスする場合、インターネット上の有害情報を遮断することはできない」の正答率が低い傾向にありました。

さらに、「フィルタリング設定は遠隔で変更できるので、お子様のスマートフォンから直接変更する必要はない」の正答率が未就学児および小学校低学年では3割を切っているなど、フィルタリングサービスが正しく理解されていないことが推測できます。

フィルタリングサービスの理解度
フィルタリングサービスの理解度/総務省(最終閲覧日:2024.3.28)

さいごに

SNSを起因とする犯罪は多数ありますが、性犯罪につながる背景にはSNSに投稿された子どもの悩みを目にした大人のユーザーが相談に乗る、あるいは相談に乗ったふりをしてコミュニケーションを続けることで、子どもが懐柔されてしまうケースが多いと推測されています。

また、保護者が考える「危険」と子どもが考える「危険」の認識にズレが生じている可能性があります。

子ども、保護者のいずれにおいても、「自分は大丈夫」「自分の子どもは大丈夫」と過信せず、SNSの利便性や有用性だけでなく、その危険性についても一緒に考えてみることが必要なのかもしれません。

koedoでは、今後も子どもにスマートフォン持たせることで起きるトラブルについて、定点観測を続けていこうと考えています。

(koedo事業部)

【参考】