何が学べて、どんな力が身につくの? プログラミング教育が小学校から必修化された目的とは

2021年1月24日

2020年から始まった、小学校のプログラミング教育。「小学生に本当に必要?」「学ぶには早すぎるのでは……」と考える方も多いのではないでしょうか。小学校のプログラミング教育はなぜ必修化されたのか? その目的や、プログラミング教育によって学べる内容について解説します。

「プログラミング教育」とは?

「プログラミング教育」とは、学習指導要領の改正により必修化された、「プログラミング的思考」を養う教育のこと。小学校は2020年度から始まり、中学校では2021年度から、高等学校では2022年度から実施されます。

 馴染みのない人にとっては、「プログラミング」と聞くと「難しそう」「小学生で学べるの?」と不安に思う方も少なくないでしょう。しかし、プログラミングは私たちの生活のありとあらゆる場面に存在していて、生活を送るうえで必要不可欠な技術となっています。

プログラミングは「指示通り動くようにする」作業

プログラミングとは、コンピューターに処理してほしい一連の作業を順番に書いていく作業のことをいいます。

 例えば料理をするとき、①食材を購入する②野菜を洗う③目的に合った大きさに切る……など調理する順番があります。これが「プログラム」。この「プログラム」をコンピューターが実行できるように、手順を書き示すのが「プログラミング」です。

身近なものだからこそ、学ぶ必要性がある

コンピューターは人間のように自分で考えたり、意思をもって何かをすることはありません。ですが、パソコンやスマートフォンはもちろん、テレビや冷蔵庫などの家電もプログラミングによって動いています。

 プログラミングという言葉は難しそうに感じても、実はとても身近で普段から触れているもの。そしてこれからますますITやAIの技術が進化するにつれ、生活必需品の多くがさらにプログラム化されていくと考えられます。そう思うと、プログラミング知識は子どもたちが社会で活躍するために、必要不可欠な要素であることがよくわかるのではないでしょうか。

プログラミング教育が導入された背景

ではなぜ、プログラミング教育が小学校から必修化されることとなったのでしょうか。その背景には、社会のIT化や飛躍的に進化するAI(人工知能)技術、グローバル化などによる第4次産業革命が挙げられます。

 社会は常に変化を続けます。現に2020年、私たちの生活は大きく変化しました。そしてこれから先、特にITやAI技術はますます進化を続けていくでしょう。そうした将来の予測が困難な社会で、子どもたちが自らの力を発揮して豊かに生きていくためには、多くの情報や変化を柔軟に受け止め、主体性を持ち、自分で学び判断しながら、他者と協力し合って問題を解決していく力が必要不可欠となります。*1

 また、これからの時代、IT力は世界的にも必要不可欠な能力。現在でもすでに90%の職業で、基礎的なITスキルが必要不可欠と認識されており、世界ではすでに多くの国が、プログラミングを学校教育のカリキュラムに導入しています。

 一方、日本は慢性的なIT力不足で、2030年までには約79万人のIT人材不足が生じる*3と言われています。今後ますます「IT力競争」が激化すると予測される社会で、子どもたちが自分の力を活かしながら生きていくためにも、子どものころから「IT力」を養っていくことがとても大切なことなのです。

小学校で学ぶのは「プログラミング的思考の育成」

「プログラミング教育」と聞くと、「プログラミング言語を用いた技術の習得」と考える人がいますが、小学校ではこうした知識の習得は目的としていません。

 小学校で学ぶプログラミング教育では「プログラミング的思考の育成」に重きを置いています。

「プログラミング的思考」について、文科省では次のように定義しています。

「自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組合せが必要であり、一つ一つの動きに対応した記号を、どのように組み合わせたらいいのか、記号の組合せをどのように改善していけば、より意図した活動に近づくのか、といったことを論理的に考えていく力」*4

 端的に言うと「目的達成のために必要な情報や適切な行動を選び取り、手段を順序立てて考え計画的に実行する思考力」のこと。

 この力をプログラミング教育では理科、算数、音楽、図画工作、総合学習などの授業やクラブ活動に取り入れ、学んでいきます。

プログラミング教育によって養われる能力

それでは具体的に、プログラミング教育ではどういった力が養われていくのでしょうか。文部科学省が発表している「プログラミング教育を通じて目指す育成すべき資質・能力」について解説します。

プログラミングの知識・技術

小学校では、プログラミングがどのようなところに使われているのかを知ることで、便利な生活の背景にあるコンピュータ技術を発見していきます。家にある家電や街で見かける自動販売機、車にも電車にもプログラミングが用いられていることを知れば、コンピュータ技術やテクノロジーを身近に感じることができます。

さらには、プログラミングを知ると、プログラムによって問題が解決できることに気づきます。この気づきが、勉強以外の身近な問題に関しても、自分で解決できるよう順序だてて考えられる力を養います。

思考力・判断力・表現力など

プログラミング教育は、さまざまな教科に取り入れながら学んでいきます。例えば算数なら、コンパスと鉛筆で描く図形とプログラミングによって描く図形両方を実践し、プログラミングの便利さを理解します。さらに早く、上手に描こうと工夫することでプログラムするための思考力、判断力が養われます。

 図画工作では、自分の作品をプログラミングによって動かすことで表現の幅が広がることを知り、新たな発想や創造力へとつなげていきます。

学びに向かう力・人間性など

プログラミングやテクノロジーは身近にあり、自分もそれに触れていると知ると、興味関心はより強くなるものです。そして自分もプログラミングを活用して物を動かすことができる、それによって自分も周りの人たちも便利になることがある、表現する可能性も広がるとわかると、「もっと知りたい」気持ちがどんどん高まっていきます。

 知れば知るほど、コンピュータの働きを生活に生かそうという姿勢が育まれ、そうした思考が身についていくことでしょう。

 また、論理的に考えて問題を解決するプログラミング的思考は、日常生活で直面する問題解決にも役立ちます。友人とケンカしてしまった、家族と意見が合わないといったトラブルは、交際範囲が広がり自分の意思をしっかりと持ち始める小学生から見られる悩み。プログラミング的思考を身につければ、自分で考えて解決できる力が養われるていくはずです。

プログラミング教育は、子どもの将来の選択肢を広げる学び

プログラミング教育は始まったばかりなだけあって、まだ手探りで授業を進めている小学校も少なくないと聞きます。それでも授業ではパソコン操作に慣れている子どもの様子が見られたり、「みんなで議論しながら楽しそうに熱中していた」という先生の声もあり、大人たちが困惑する一方で、スマートフォンやタブレットに慣れ親しんでいる子どもたちの方が実は「プログラミング教育」にスムーズに適応しているのかもしれません。

 プログラミング教育は、IT化やAI技術が進化を続ける社会を生きていく子どもたちにとって、必要不可欠な学びです。「子どもだから難しい」という固定概念は捨て、子どもたちがどのようなことを学んでくるのか、その感想を楽しみに待ちながら、子どもたちの可能性と将来の選択肢を広げていってあげたいですね。

■出典

*1 幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について/文部科学省
*2 未来の学びコンソーシアム 小学校プログラミング教育の必修化に向けて/文部科学省
*3 平成 30 年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(IT 人材等育成支援のための調査分析事業)/経済産業省
*4 小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について/文部科学省

■この記事を書いたひと
soraeto
1981年生まれ。レコード会社の営業、雑誌編集、ブライダル企業の広報を経てライター・エディターに。現在はWebを中心に、子育て、ブライダル関連、中学受験情報を執筆中。女児2人の母。涙もろく、特に子育てに関する記事は編集しながら泣くことも多い。活き活きした姿を子どもに見せられるよう、好きな仕事、知りたい学びに積極的に邁進中。