参考書の選び方――ちょっとその前に……

 仕事柄、いろいろな人から「良い参考書ってある?」と聞かれることが多い。基礎からきちんと解りやすくか書かれているものを「良い参考書」と呼ぶのであれば、教科書が最強である。どんな参考書よりも丁寧に、いま子供たちが学ぶべき事柄が書かれている。公立入試では教科書の範疇を越えないとするならば、公立入試を目標とする子供たちにとって教科書が一番のバイブルだ。

 その教科書をさて置いて、「何か良い参考書を……」と探す“参考書の迷い子”は多い。

 そもそも、いまの子供たちは教科書が読めていない。テスト前であっても教科書を読まずにテスト勉強に取り組み、「わからない」と言って質問をしてくる子が大勢いる。そして、その「わからない」を鵜呑みにして「何か買わないと!」と焦っている親も多い。

 参考書を買う前に、自分の子供が教科書をきちんと読めているかをチェックすべきだ。この教科書、きちんと読み込めばかなりの優れもの。小・中学校まではお金もかからない。そう考えると、コスパはかなり良い。その教科書を差し置いて市販の参考書を買うのは、「ちょっと待った!」と言いたい。

 中学生になると学校から問題集、いわゆるワークを配られている。教科書をしっかり読み込んで、このワークをしっかり練習すれば、かなりの学力がつくようになっている。それなのに学力がついていないのは、ワークの使い方や学校におけるワークの位置づけが悪いからだと思う。

 学校の先生は、このワークに関してテスト前に「○ページから●ページまでが範囲なので、各自で解いて答え合わせまで。テスト終了日に回収します」これだけ。先生は問題の解説をしない。子供たちは提出に間に合うように「答えの丸写し」をして出すだけ。これでは学力に結びつくわけがない。もちろん個別に質問をすれば答えてくれる先生もいるが、なかには「数学は気合で解いて」と差し戻す先生もいるとか。

「何か参考書を!」とやみくもに思う前に一度立ち止まり、学校の教科書は読めているのか、学校からのワークはきちんと使いこなせているのかをチェックして欲しい。

 とはいえ、参考書がどうしても欲しい人もいる。そこで大事なのは「誰が参考書を選ぶのか」ということだ。子供自身が「これを使ってみたい」と差し出しても、「それは簡単過ぎない?」と言ったり、「こっちの方が有名な先生が書いているから、きっとこっちが良いよ」と言ったりと、親が却下することも多いと聞く。参考書や問題集は子供の好みがかなり分かれるところ。ここは本人が使いやすいと思えるものを尊重して欲しい。

 反対に問題集に関しては、好みだけでなくレベルに応じて買い分けて欲しい。特に国語の読解問題や英語の長文読解などは、場数を踏んでいる方が強い。だからこそ様々なジャンルに触れ、自分の苦手な文章にも我慢強く取り組む必要がある。これを好みで選んでしまうと、嫌いなジャンルを出題されたときにお手上げになってしまう。

 インプットは教科書やその補助教材で十分に事足りるが、アウトプットに関しては市販の教材もぜひ使って欲しい。そのときは必ず、解説が丁寧に書いてあるものを選ぶと良い。解説が貧相なものは、子供たちが「解説すら分からない」と言って見向きもしなくなるからだ。

 そして、選ぶ教材はできればアナログの紙媒体を推奨する。デジタルの教材で間違ったとき、子供たちは「こっちがダメならあっちにしよう戦法」で脱しようとする。某有名タブレット教材も、間違いが続くとだんだん選択肢が狭まってきて、最後は2択になる。それでは本当の力にならず、何となく勉強した気にはなるが本当の学力にはならない。

 ぜひ、間違った問題は自ら解説を読み、自分の考えはどの過程まで合っていて、どこから解答を間違ったのかを自分で検証し、糧にして欲しい。そのためにも、教科書を使ってしっかり基礎学力からつけることをお勧めする。

この記事を書いたひと

松本 正美
(まつもと まさみ)

「学ぶ力は、夢を叶える力!」松島修楽館代表。中学3年生の時に「将来は塾の先生になる!」と決意し、大学1年生から大手個別指導塾で教務に就く。卒業後、そのまま室長として10年間勤務。その後、新興のインターネット予備校で生徒サポートの仕事に携わった後、2013年に松島修楽館を開業。単なるテストのための勉強だけではなく、「どんな夢でも、正しい努力によって叶えることができる」ということを子どもたちに伝えるため、根本的な「学ぶ力」を育むことを重視した指導を行っている。2人の高校生の母。趣味はサックス、タップダンス。