英語嫌いが増殖中!? 教科書改訂における小学校英語の課題

2020年の新学習要項に基づいて、小学校で英語の学習が必須化された。学習内容には、従来であれば中学校で学ぶ文法も含まれており、疑問詞や代名詞、助動詞、動詞の過去形なども習得する。また、小学校卒業までに300~600語程度の語彙力を身につけるという目標が掲げられている。これを小学生に学ばせるのはかなり大変である。

実際に、「先生! 学校の英語が嫌い過ぎてどうしたら良いのかわからない」と小学生から相談を受けることも多い。嫌いになってしまった原因の一つとしては、「意味もわからないまま言わされるし、書かさされるから」ということであった。いままで英語の発音に馴染みがないまま外国人の先生の発音を聞かされても、まったく聞き取れないので理解不能だそうだ。

察するにほとんど意味がわからず、拒否反応に近い状態なのだろう。そうなれば当然、授業自体が楽しく感じられず、子供の頭の中で「英語=大嫌い!」の公式が成り立ってしまっていた。他の小学生にも聞いてみたが同様に「意味がわからない、面白くない」と声を揃える。

確かに、私の息子も小学校での英語は大嫌いだった。「意味がわからない」と言っていた。中学に入り、文法を学習し、理屈がわかるようになって初めて、英語が得意に転じた。ただ彼の場合、読み書きはできるが、話せないのでコミュニケーションは取れない。今回の新学習要項の目的にある「コミュニケーションを取る」という分野では、やはり「嫌い」に変わりなかった。

生徒からヘルプ要請をもらったからには、何とかしなければと頭を悩ませた。まず一番に変えたかったことは「英語が嫌い」という意識。意味がわからないから「嫌い」というのなら、意味がわかるようになって、先生が何を聞いているかだけでもわかるような授業を考えた。学校の授業の進捗を聞きながら、教科書に出てくる疑問詞をしっかり覚えさせた。何度も一緒に発音をしたり、会話形式で確認しながら、疑問詞だけでも聞き取らせることにした。

「when」が来たら何か時間について聞いているから、注意だよ!「where」と聞こえたら場所を考えてみて! など、相手の会話の一番初めを注意して聞き取らせることにした。最初は私の下手な日本語交じりの発音で理解してもらった後、タブレットを使いネイティブの発音にのせて発音させるようにした。そのときも、一人にせず、一緒に発音してあげた。小学生ともなれば恥じらいの心も芽生えてくるので、一人は可哀想。私も一緒に張り切って発音する。

次に子供たちが困っていたのは「スピーチ」だった。自分で英作文を作って、それを暗記して先生にスピーチをする。まず、英作文が書けない。ある生徒は中3のお姉ちゃんに手伝って書いてもらったと言っていた。私の住む福岡の公立入試では英作文が必ず出題されるが、中学生でもかなり練習を積ませる。それでやっと書けるのに、英語がまったくわからない小学生が書かなければならないとなると、これは負荷が高い。

そこで、生徒が書いてきた英作文の訳を取り、自分が書いた文章の意味をまずは理解すること。それから発音の練習。ここでも私の下手な発音でゆっくり言えるようになったら、タブレットにその原稿を打ち込み、読み上げ機能を使って一緒に発音させる。その際は本番さながらにフリップボードを持つふりまでして練習してもらった。

結果、きちんと発表はできたようだが、小学生が一人で英語を勉強するのは大変だ。しかも学校配布のタブレットや教科書は、学校に置いて来なければならない学校も多いという。

今春には中学校の教科書も大改訂が行われ、必須単語が激増し、文法も高校の内容が下りてくる。中学生の英語嫌いも増えそうな予感だ。そのためにも、私の塾ではフォニックス講座を取り入れたり、早い段階で新しい教科書内容に触れさせたりと工夫をしている。

これからも子供たちにとって英語教育を楽しく、有意義なものにするために試行錯誤の日々が続きそうだ。

この記事を書いたひと

松本 正美
(まつもと まさみ)

「学ぶ力は、夢を叶える力!」松島修楽館代表。中学3年生の時に「将来は塾の先生になる!」と決意し、大学1年生から大手個別指導塾で教務に就く。卒業後、そのまま室長として10年間勤務。その後、新興のインターネット予備校で生徒サポートの仕事に携わった後、2013年に松島修楽館を開業。単なるテストのための勉強だけではなく、「どんな夢でも、正しい努力によって叶えることができる」ということを子供たちに伝えるため、根本的な「学ぶ力」を育むことを重視した指導を行っている。2人の高校生の母。趣味はサックス、タップダンス。