【親になるということ】問いかけの言葉を会話の軸に

2022年7月29日

「親子の会話」というと、何を思い浮かべますか? イメージとしては、食卓でご飯を食べながら子供が「今日の出来事」を話し、大人がニコニコとそれを聞いている感じでしょうか。もしくは夜、寝かしつけの布団の中で子供たちの話を聞きながら、一緒に寝てしまう……昔のテレビドラマでよくあった、家族の団らんの風景でしょうか(すみません、そういう年齢なのです)。

でも、実際子育てをしていて、こんなシーンに出会うことは多くありません。たいてい親はすごく忙しくて、早くご飯を食べさせたいし、一緒にまどろむというよりは「寝落ちする」感覚で意識をなくすといった状況ではないでしょうか。少なくとも私はそうでした。

なんとか話を聞いてほしい子供たちは、私が料理をしていようが、トイレに入っていようが(仕事中はジャマしてはいけないと言われているので)、隙を狙って話しかけてくる感じでした。いまでもそれは続いていて、ひどいときはお風呂に入っているときにドア越しに話し続け、私のほうがのぼせるという災難? にあったりします(ちなみに私の子供たちはもう大学生と高校生です)。このため、いまでも「親子の会話(イメージ)」には憧れを持っています。

この、親子の会話。シチュエーションはともかく、当然大切なのは「内容」になります。今日の出来事を話す子供に、あなたはなんと返しているでしょうか。

例えば、クラスで授業が始まっていてもおしゃべりを続けるお友達がいたとして、そのことについて「〇〇さんはずっとおしゃべりしているんだよ?」と言われたとします。あなたが返す言葉にはいくつか選択肢があります。

  1.  そうなんだ、〇〇さんはずっとしゃべっているのね?
  2.  そうなんだ、困ったねえ
  3.  そうなんだ。先生(周りのお友達)は何と言ってるの?

他にもあると思いますが、とりあえず3つ考えてみました。1番は、子供の話をオウム返しにして、あなたの話を聞いているよ、という状態を作り出す、傾聴のような感覚です。2番は、普通に会話をしていて、自分の感想を述べています。3番は、「おしゃべりが止まらない」ことに対して周囲がどう対応しているのかを確認しています。その対応方法によっては、さらに詳しく聞くか、自分の意見を言うか、はたまたオウム返しになるか……と分岐していくのでしょうか。

子供との信頼関係や共感を強くするという点では、おそらく1番がよいのでしょう。また、3番のように、子供が事実を認識したうえでさらに周囲に目を向けることができるよう促していく、さらに話を膨らませていくということも会話を長く続けるコツになります。

では、2番はどうでしょうか。そうなんだ、と返すことで事実は受け止めていますが、次に困ったねえ……と言っています。ここで止まってしまうと、子供は「そうだよね、困るんだよ!!(おしゃべりするのが悪いんだよね)」という解釈をしてしまう可能性があります。

授業が始まっておしゃべりを続けるのは確かに良いことではありませんが、大事なのはその状況をどう変えていくか、子供が自分で考えるように話をもっていくことだと思います。親としては、教室が落ち着かなければ授業が進まないわけですから、困ったねえ……は当然の気持ちです。それを子供に伝えてはいけないというわけではありません。だから、こういう言葉を追加しましょう。

  1. そうなんだ、私はみんなが落ち着いて勉強を始められないのは困ったなと思うけど「あなたはどう思う?」

困ると思う理由と、この事実についてあなたはどう思うのか、そしてなぜそう思うのか、その結果、どうしたらよいと思うか。このようなやり取りを、ご自分の意見も交えて続けていくと、「自分で考える」ことに慣れてくるのかなと思います。

クラスのお友達のことに関して、一人で解決することは難しいですから、最終的には担任の先生に話すことになるでしょう。そのときに「なぜ」という理由と、「問題を解決したい」という意見をきちんと説明することができれば、それは告げ口で終わらずに、課題解決への糸口になるのかもしれません。

もうひとつ、このようなやり取りを続けていると、「私はこう思う」という意見を言った後に「僕(私)はそうは思わない」と言われることがあるかもしれません。私は上の子が中学3年生、下の子が2年生のときに経験しました。いままで私の意見を「そうだよね」と聞いていた子供が、違うということ。確かにショックでもあるのですが、とても嬉しかったことを覚えています。

お互いの意見をきちんと伝え合った話し合いができることは、相手との合意を得、共通の理解を生み出すことにつながります。でもそれは大人になったらできることではありません。小さなときから少しずつ慣れていくことが、一番身につく方法なのかなと思います。

この記事を書いたひと

ライター:吉田理子様

吉田 理子
(よしだ りこ)

1971年生まれ。Windows95発売当時に社会人となり、以降パソコン教室講師やITサポート等の仕事に従事。2005年に企業・学校向けのIT、情報教育を目的とした企業組合i-casket設立。2018年には一般社団法人s-netサポーターズを設立し、主に小中学校にて子供・保護者・教員向けの情報リテラシー、プログラミング的思考に関する講座を行う。そのほか地域ボランティアや主権者教育の活動をボランティアで。趣味は料理と読書。