【親になるということ】あなたは「誰」ですか? ~ママ友と友達を分けるものとは~

「ママ友」という楽しくも、ちょっと重たい響きのこの言葉。初めてママ友ができたのはいつだったでしょうか。私が本格的に「ママ友」と呼べる人たちに出会ったのは、子どもが幼稚園に入ったときでした。

毎日のお迎えなどで顔を合わせるようになって、同じクラスの保護者同士でランチに行って……そのときの人たち全員といまでも会っているわけではありませんが、子どもが幼稚園を卒業して15年以上たったいまでも、連絡を取り合っている人は何人もいます。初めての子育てで緊張したり悩んだりしたときに励ましあったとても良い仲間です。

しかし、最近幼稚園の園長先生とお話をする機会があり、この「ママ友」という存在がいろいろと難しいのだということを聞きました。どういうことかというと、関わり方を間違えてしまう人がいるというのです。では、「ママ友」と「友達」の違いは何でしょうか?

正解があるわけではありませんが、私はその人との間に「子ども」の存在があるかどうかだと思います。例えば幼稚園や保育園で他の保護者を呼ぶときに、なんと呼びますか? 公には例えば「吉田さん」と苗字で呼ぶかもしれませんが、たいていの場合は「〇〇ちゃん(くん)ママ」になるのではないでしょうか。

ママ友はあくまで「子ども同士が友達(や同級生)」の保護者としての付き合いになるのだと思うのです。間に子どもがいる、つまりママ個人の友人ではありません。そう考えると、付き合い方は変わってくるのではないでしょうか。

別によそよそしくしなさいとか、本心は隠しなさいとかそういうことではありません。ママ友はあくまで、親としての付き合い方の域を出ない方が、トラブルが少ないということなのです。

上の子のときには感じなかった違和感を、下の子のときに感じたのは幼稚園の入園のときです。同じクラスで、名前が近い子のママと、仲良くなりました。初日は「吉田さん」と呼んでいた彼女は、次の日のお迎えで会ったとき、呼び方が「理子ちゃん」になっていました。自分のことも下の名前で呼んでね?と笑顔で言われ、とても戸惑いました。だって私は彼女のことを何も知らないのです。ただ同じクラス、昨日少しお話ししただけなのに、もう「私たち親友なの! すごく仲が良いの!」という雰囲気なのですから。

彼女は私よりもだいぶ若くて、案の定話題が合いません。子ども同士も(男の子と女の子だったので)それほど仲良くなったわけではなかったので遊ぶ機会も少なくて、自然と離れていきました。でも後日、彼女が私について、「せっかくママ友ができたと思ったのに、全然私のことわかってくれなかった」と話していることを知りました。これは悪いことをした、彼女は友達が欲しかったんだ……と反省しましたが、ママ友のとらえ方が違うのだなということがよくわかりました。

もう一つ私の経験です。PTAで6年間一緒に活動した人がいました。子どもは同じ学年で、習い事も一緒。気が合うというよりも仕事ができて信頼できる人という印象でした。お互い、ずっと苗字で呼び合い、基本的には丁寧語です。それこそ長い長い時間を共に過ごしてきて、子育てのことから仕事のこと、個人的な悩みまで打ち明けるような関係になっても、その姿勢は崩れませんでした。

いま、彼女と私は下の名前で呼び合うようになっています。お互いPTAの表舞台からは退いて、以前よりも会う時間は減っています。子どもたちも別々の高校に通い、一切連絡を取っている様子はありません。ここにくるまで10年かかりました。でも、だからこそ、彼女はママ友ではなく、私の大切な友人であると言い切れるのです。

子どもが集まる場所、保育園や幼稚園、サークル、学校において、私たちは親という立場で人と関わります。中心にいるのは子どもたち。彼らが友達同士のコミュニケーションを学び、成長していくうえで、親同士のトラブルは良い影響を与えません。無駄に気を使ったりする必要はありませんが、やはり最初は一般的な距離感をもって接するのが大事だと思います。

その中で、少しずつお互いを知り、距離を縮め、子どもの関係を抜きにした「友達」になっていくのではないでしょうか。

「ママ友」が子どもを間に挟んだ関係ならば、子ども同士の関係に影響しない個人的な関係が「友達」だと思います。子育ての間、私たちにはママ友も友達も必要です。その関係が子どもに影響するのか、そうでないかを考えて、お付き合いをしていきましょう。

いま、私は「誰」なのか。母親なのか、自分個人なのかで意識を変えていきましょう。急いで「親友」をつくらなくても大丈夫。子育てを一緒にしていく中で、ママ友の中からたくさんの友達ができると思いますよ。

この記事を書いたひと

吉田 理子
(よしだ りこ)

1971年生まれ。Windows95発売当時に社会人となり、以降パソコン教室講師やITサポート等の仕事に従事。2005年に企業・学校向けのIT、情報教育を目的とした企業組合i-casket設立。2018年には一般社団法人s-netサポーターズを設立し、主に小中学校にて子ども・保護者・教員向けの情報リテラシー、プログラミング的思考に関する講座を行う。そのほか地域ボランティアや主権者教育の活動をボランティアで。趣味は料理と読書。