【古代メキシコ×STEAM教育】古代メキシコ共通の神 ートラロク・ケツァルコアトル

2024年2月7日

アステカ帝国の成立は1325年。メキシコ高原のテスココ湖に浮かぶ島に建設したテノチティトランを首都とし、周辺諸国を次々と征服していきました。

大航海時代~メキシコとスペイン、日本とスペイン・ポルトガル~

イメージ写真
帆船(イメージ)

15世紀半ばから17世紀半ばにかけて、羅針盤や航海技術の発達によりスペインやポルトガルなどヨーロッパ人によるアフリカ・アジア・アメリカ大陸への大規模な航海が行われました。いわゆる大航海時代の始まりです。

スペイン人が現在のメキシコに初めて侵入したのは1517年。コロンブスがユカタン半島沿岸を探検し、途中、海上でマヤ人と遭遇していますが上陸はしていません。1519年、約500人のスペイン人がメキシコ湾から上陸し、アステカ帝国への侵略を開始しました。

アステカ王であったモクテスマ2世(在位1502年~1520年)は、ケツァルコアトル神の再来と信じたスペイン人の代表エルナン・コルテスと会談。このときの玉座が残っています。

ケツァルコアトル
左右いずれも
BIZEN中南米美術館蔵 
《聖戦のテオカリ(レプリカ)》
メキシコ中央高原 メキシコシティ 
アステカ 1507年

玉座の正面にはアステカカレンダー、向かって左に軍神ウィツィロポチトリ、右にはモクテスマ2世が刻まれています。

1521年、首都テノチティトランを征服されアステカ帝国が滅亡。その後、約300年にわたってメキシコはスペインの植民地となります。

スペイン人によるアステカ帝国征服より少し遅れて、日本にもスペインやポルトガルの船がきています。

1543年、種子島に漂着した船に乗っていたポルトガル人によって鉄砲が伝来。
1549年にはキリスト教布教のためスペイン人フランシスコ・ザビエルが到来しています。

天文学・物理学の発展

大航海時代、航海技術の発展とともに天文学や物理学が急速に発展します。

この当時、太陽や月、星の位置を頼りに航海していたからです。

1543年、コペルニクスが地動説を唱え始め、1608年、望遠鏡が発明されました。
また、1609年および1619年にはケプラーが惑星の軌道が正円ではなく楕円である(ケプラーの法則)ことを発表。これを1687年、ニュートンが万有引力の存在を仮定することによって説明しています。

ガリレオが自ら改良したガリレオ式望遠鏡を使って木星の衛星、月面のクレーター、太陽の黒点などを発見・発表したのは1610年です。

「メキシコ」という国名の由来

メキシコという国名は、アステカの守護神であるウィツィロポチトリの別名で、神に選ばれし者を意味する「メシトリ」に、場所を表す接尾語「コ」が付いたものを由来としています。

ウィツィロポチトリはアステカ神話の太陽神・軍神・狩猟神で、メキシコの国旗・国章に描かれています。「交易と戦争 ~人身供犠とは~」でも触れましたが、古代メキシコでは、太陽神であるウィツィロポチトリは夜になると無数の星と戦わなければならず、夜ごとの戦いに勝って初めて毎朝太陽が昇ると考えられていたため、古代メキシコの人々はウィツィロポチトリに対して人身供犠を行っていました。

メキシコ国旗
メキシコ国旗

古代メキシコ共通の神① 「トラロク」

トラロク神の壺
特別展「古代メキシコ ―マヤ、アステカ、テオティワカン」出展作品
《トラロク神の壺》 アステカ文明、1440~69年
テンプロ・マヨール、埋納石室56出土
テンプロ・マヨール博物館蔵
©Secretaría de Cultura-INAH-MEX. Museo del Templo Mayor

トラロク(tlaloc)という名前は「トラリ(tlalli)」から派生したとされています。
Tlalliは「大地」、ocは「彼は座る」という意味します。直訳すると「大地に座る者」となるため、トラロクは天から恵まれた水の神、つまり雨の神であると同時に雷や嵐のシンボルとしてメソアメリカ文明で広く信仰されています。

BIZEN中南米美術館蔵「トラロク」
BIZEN中南米美術館蔵 《トラロク(左)&ショチケツァル(右)板状土偶》
メキシコ メキシコ中央高原 アステカ 1325年~1521年

メキシコの気候は地域により異なり、メキシコ北部やメキシコ中央高原部は乾燥帯、メキシコ湾沿いや太平洋側は温帯、ユカタン半島を含む南部は熱帯です。

メソアメリカは農耕社会のため、日常生活水以外に、植物の生育のための大量の水、雨が絶対に必要です。そのため、古代メキシコの人々は雨が降るように祈祷、供物、子どもの生贄(いけにえ)などをトラロクにささげていました。

トラロクは1325年ごろテノチティトランに建設されたテンプロ・マヨール(ナワトル語でテオカリ「神の家」の意)で、軍神ウィツィロポチトリとともに祀られていました。

テンプロ・マヨールに建造された階段状のピラミッドは西を向いていて、最上部にある神殿で重要な宗教儀式が行われていました。

気候帯

気候帯分布図
気候帯の分布

気候帯には大きくわけて次の5つあります。

気候帯区分

  • 熱帯…1年を通して高温多湿。
    • 熱帯雨林気候…1年中気温が高く、降水量が多い
    • サバナ気候…1年中気温が高く、雨季と乾季がある
  • 乾燥帯…年間降水量が250mm以下の地域。
    • 砂漠気候…昼夜の気温差が大きく、雨がわずかに降る季節がある
    • ステップ気候…昼夜の気温差が大きく、年間を通して雨がほぼ降らない
  • 温帯…四季があり生活しやすい気候。最も寒い月の平均気温が18度以下から-3度以上
    • 温暖湿潤気候…夏は降水量が多くなり、冬はやや乾燥している(南半球では逆)
    • 地中海性気候…主に地中海沿岸部で見られる気候。夏に降水量が少ない
    • 西海岸性気候…緯度が高いわりに暖かい
  • 冷帯…北緯40度以上の北半球にのみ存在する気候。夏と冬の寒暖差が大きく、冬の月平均気温は0度を下回る
  • 寒帯…1年中または1年の大半が0度以下となる気候

日本の気候はほとんどが温帯に属し、温帯のうち温暖湿潤気候に属しています。ただ、北海道や東北地方は冷帯に属していて、冷帯のうち亜寒帯に属しています。

また、南西諸島は亜熱帯という熱帯と温帯の間のような気候です。

古代メキシコ共通の神② ケツァルコアトル

ケツァルコアトルはアステカ神話では民衆に文化を授けた神であると同時に農耕の神、風の神とされています。また、テオティワカンでは主神、マヤ文明では最高神「ククルカン」として崇められていました。

チチェン・イツァにはケツァルコアトル(羽毛の蛇神)を祀るピラミッドがあります。

この神殿は大きな9段の階層からなり、4面に91段の階段が配されていて、最上段にはククルカン神殿があります。

4面の91段を合計すると364段、最上段の神殿の1段を足すと365段となるため、「暦のピラミッド」とも呼ばれています。

羽毛のある蛇神
特別展「古代メキシコ ―マヤ、アステカ、テオティワカン」 ※展示風景は東京会場
※展示風景は東京会場(会期:2023年6月16日(金)~9月3日(日))のもの
《羽毛の蛇神石彫》 テオティワカン文明 200年~250年
テノチティトラン 羽毛の蛇ピラミッド出土 テオティワカン考古学ゾーン

また、アステカ神話では、ケツァルコアトルは風の神「エーカトル」に化身するとされていて、創造神や文化英雄の一柱として描かれています。

エーカトル
BIZEN中南米美術館蔵 《エーカトル板状土偶》
メキシコ メキシコ中央高原 
アステカ 1325年~1521年

日本における宗教とカミ

日本人は「無宗教」と言われる人が多いとされていますが、文化庁の調査によると2021年12月31日時点で各宗教団体の信者数は合計約1億7900万人。日本の総人口数が約1億2000万人ですので、複数の宗教を信仰している人が多いことが分かります。

内訳を見てみると神道系信者数約8,723万人(49%)、仏教系信者数が約8,324万人(46%)、キリスト教系が約196万人(1%)、そのほかの信者数が約711万人(4%)となっています。

信仰宗教割合
令和4年度「宗教統計調査」をもとに作成

では、なぜ日本人は無宗教と言われているのでしょうか。それは、西洋人が考える「神」と日本人が考える「カミ」が違うということが考えられます。

西洋人にとって神は唯一絶対ですが、日本人はあらゆるものに「カミ」を感じています。

日本古来の「カミ」は、自然現象を人格化したものです。
『古事記』や『日本書紀』に登場するカミや神社に祀られているカミはもちろん、太陽や月、風や雨、山や海、大きな岩や木も「カミ」として祀られています。

日本人は生まれたときに神社でお宮参りをし、ウェディングドレスで結婚式を挙げ、亡くなったときにはお寺で葬式を挙げるという不思議な習慣を持っています。

これは、日本人が無宗教だからではなく、日本人はあらゆるところにカミを感じていることと関係があるのではないでしょうか。大きな木や岩、山や海などにもカミを感じている日本人にとって、外国の神に親しみを覚えることもごく自然のことなのかもしれません。

さいごに

古代メキシコでは、トラロクやケツァルコアトルなど、何世紀にもわたって信仰されている神々がいます。トラロクは雨の神であると同時に雷や嵐のシンボルとして、ケツァルコアトルは農耕の神として広く信仰されています。

日本で大きな木や岩、山や海、風や雨など自然界のあらゆるものにカミを感じているのと同じように、メキシコでも自然を司る神がいることに親近感を覚えませんか?

アステカ神話は破滅と再生を繰り返す世界です。登場する神のなかには悪魔と呼ばれている神がいたり、死神と呼ばれている神がいたりします。興味をもった方は、ぜひ、アステカ神話を読んでみてください。

BIIZEN中南米美術館

  • 展覧会名:「冒険!マヤ文明」展 エピソード2
  • 期間:2023年3月28日~10月9日(月・休) 終了しました
  • URL::https://www.latinamerica.jp
特別展「古代メキシコ ―マヤ、アステカ、テオティワカン」

  • 東京国立博物館 平成館  2023年6月16日(金)~9月3日(日) 終了しました
  • 九州国立博物館(福岡会場)2023年10月3日(火)~12月10日(日) 終了しました
  • 国立国際美術館(大阪会場)2024年2月6日(火)~5月6日(月・休)

(koedo事業部)

【参考】