若者の読解力が危ない! 国語力の低下とSNSに関係が?
若者の読解力が危ない…ということを聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
OECD(経済協力機構)が、15歳の子どもを対象に3年に1回「数学的リテラシー」「科学的リテラシー」「読解力」の3つについて国際的な学力調査(以下「PISA」という。)を行っています。
この結果を見ると、初めて行われた2000年の調査で日本の「読解力」は8位でしたが、2003年の調査で14位に急落。その後、順位は徐々に回復し2012年には4位まで浮上したものの2018年に15位まで急落し、2022年の調査では再び3位まで浮上しています。
PISA調査による「読解力」から見えてくるものとは?
2003年の調査で日本の読解力が急落した理由として、ゆとり教育の影響が指摘されています。
日本で、いわゆる「ゆとり教育」が行われていたのは2002年から2011年の9年間。OECDの調査による15歳の子どもの読解力は、ゆとり教育が実施後に順位が急落し、ゆとり教育を抜け出したあとには順位が上がっています。
では、2018年に再び順位が急落したのはなぜでしょうか。
これは、スマートフォンやSNSの普及で長文に触れる機会が減ったことが要因ではないかと言われています。
モバイル社会研究所が2023年1月に15歳から79歳の男女を対象に行った調査によると、国内におけるスマートフォンの普及は年々増加していて、2010年には所有率4%程度だったものが、2015年には5割を突破、2017年には7割を突破して2023年には96.3%となっています。
ところで、2022年のPISAの調査で読解力が15位から3位まで急浮上した理由は、どこにあるのでしょうか。
文部科学省は次の3つの理由を挙げています。
- 2020年から実施されている学習指導要領の変更に伴い、国語だけではなく、ほかの科目でも資料を読み解きながら本文を解釈する力を得る授業が実施され始めていること
- コロナ禍における休校期間が、日本は世界のほかの国と比べると短かったこと
- ICT活用力の向上
PISAの調査は2015年からコンピュータを使ったテストに変わっています。前回の2018年の調査では子どもたちがコンピュータに慣れていなかった可能性が否定できません。日本では政府の主導で、2020年度から小学生・中学生に1人1台の端末が配布されています。つまり、前回の調査と比べるとICTを活用する力が向上していたことも、順位を上げる一端を担っているのではないかと考えられています。
国語力とは
国語力とは、たとえば漢字の書き取りをする力ではありません。
文部科学省は国語力を「考える力」「感じる力」「創造する力」「表す力」としています。
ところがSNSの登場で、この4つの力を伸ばす機会が奪われつつあります。
SNSでは通常、「話し言葉」でやり取りします。たとえばLINEの場合、その場で考えたことをパッと書いて、そのまま送信してしまいます。
つまり、いまの子どもたちは長い文章を書いて推敲したり、何度も書き直したり…という習慣が身に付いていないと考えられます。
国語力の低下が不登校に影響?
日本の子どもたちの国語力の低下が「不登校の児童生徒」にも関係しているのではないかと考えている専門家もいます。
文部科学省が行っている調査によると、令和4年度の全国の不登校児童生徒数は約30万人となっており、10年連続で増加しています。不登校の理由としてもっとも多いのは、「無気力・不安」で全体の約5割を占めています。
なにが不安なのか、どうして気力がわかないのか、本人にも良くわからず、言葉にできないでいる子どももいるのではないでしょうか。
少し古い資料ですが、文部科学省が令和2年に全国の小学6年生と中学2年生の児童生徒およびその保護者を対象に調査を行っています。 この調査で、複数回答可能な「最初に行きづらいと感じたきっかけ」という質問に対し、小学生の25.5%、中学生の22.9%が「きっかけがなにか自分でもよくわからない」と回答しています。
「きっかけがなにかよく分からない」というのは、もしかしたら「上手に説明できない」ということではないでしょうか。自分がどうしてほしいのかを言語化できないのかもしれません。
さいごに
OECDが行っている国際的な学力調査「PISA」によると、15歳の子どもの読解力は2018年に過去最低の15位を記録しましたが、2022年の調査ではV字回復して3位となっています。
しかし、国語力の低下と「不登校」が関係しているのではないかと考えている専門家もいます。いまの子どもは自分がしてほしいことを言語化できないのではないかというのです。その原因としてSNSの普及や読書量の減少が考えられています。
koedoでは、今後も「国語力×IT」について定点観測を続けていこうと考えています。
(koedo事業部)
【参考】