【教育現場から】都内私立高校でマインクラフトを利用した授業に挑戦!~担当教師にインタビュー~
都内の私立高校で、高校3年生の選択科目「PC活用講座」を受講している約70名の生徒を対象に、マインクラフトを取り入れた授業が行われました。
「マインクラフト」は、もともと、サバイバル生活を楽しんだり、自由にブロックを配置して建築を楽しんだりするゲームです。
では、なぜマインクラフトを取り入れた授業を行ったのでしょうか?
マインクラフトを授業に取り入れた背景
PC活用講座では、これまで主にICTプロフィシエンシー検定試験(通称:P検)対策を行ったり、「Microsoft Word」や「Microsoft Excel」などを使ったりして授業を行っていました。
これから社会に出る生徒たちにとって、ネットリテラシーを学んだりオフィス系ソフトの使い方を学んだりすることは大切なことで、必要なことでもあります。
ただ、GIGAスクール構想によって小学生のうちから端末を使う機会が増え、中学生のうちにタッチタイピングをする機会が増えていくであろうことを考えると、このまま同じ授業を行っていていいのかという疑問を抱いていました。
そこで、新学習指導要領でも重視しているアクティブラーニングの1つであるPBLを取り入れ、授業をアップデートができないだろうかと考えるようになりました。
授業内容をアップデートするにあたり、考えたことは次の3つです。
- プログラミングや情報デザインを取り上げるなど、新課程を見据えた内容にしたい。
- 生徒に合わせるだけではなく、今後も見据えた知識を身に付け、それを素地とした応用が利く授業にしたい。
- オリジナリティのある授業がしたい。
「マインクラフト」を授業で使ってみようと思った理由の1つは、自分自身がマイクロソフト認定教育イノベーター(MIEE)であることが挙げられますが、そのほかに、次のような理由があります。
- マインクラフトの使われる「Make Code」というプログラミング言語は、日本語のため初学者でもコーディングしやすいこと。
- ただコーディングするよりも、マインクラフトで「建築物を作る」という目的をもってプログラミング学習する方が、生徒のモチベーションがあがり、効果的だと考えたため。
- 生徒が大学等でプログラミングに触れる場合の素地になると考えたため。
次に考えたのは、マインクラフトで何をするべきか…ということです。
ただやみくもにマインクラフトに触れるだけでは、マインクラフトのための授業になってしまう可能性があります。
マインクラフトを使うのは、あくまでも表現方法の1つであり、プログラミング学習を兼ねた授業にしたかったのです。
そこで、生徒たちがSDGsに関心をもっていることに注目しました。
学校のある大田区では、SDGsの11番目の目標である「住み続けられるまちづくり」という課題を抱えています。
実際に大田区役所を訪れて都市開発課の方に「大田区の課題」をいただき、生徒たちには、「大田区にどんな建物・施設があったらもっと便利になるのか」ということを具体的に考えてもらうことにしました。
生徒たちには、現実に存在する問題に対し高校3年間で得た教科の知識やICTの力を使ってアプローチすることで、ただ教科書の知識を学ぶだけではなく、自ら課題を見つけ、その課題を解決するまでの過程でさまざまな知識を得てほしいと考えたのです。
授業の展開―準備・製作、そして発表―
まず、約70名の生徒で19のグループをつくり、各グループに次の手順で課題に取り組んでもらいました。
①準備
- 各グループで問題を発見し、どのような建築物を制作するか決める。
- どのような側面で問題解決をするのか提示する。
- ラフスケッチや、設計図を描く。
②製作
- マインクラフトの基本操作を学習する。
- 各グループで役割を決め、マインクラフトを活用しながら建築物を制作する。
- Googleドライブで共有する。
③発表
- どの問題を解決するために、どのような建築物を建てたのかをグループごとに発表する。
- 振り返りを行う。
最後の授業では、「Ai GROW」という評価ツールを使ってフィードバッグを実施。
ただ感想をアウトプットするだけではなく、「自分にはどのような力があるのか」「他者から見て自分はどのような力があるのか」を相互評価しながら、コンピテンシーを多面的に評価して、可視化することにも取り組みました。
授業を通して生徒に伝えたかったこと、期待することとは…
授業をとおして、生徒に伝えたかったことは主に次の3つです。
- 生徒自身が自ら課題を見つけ、その課題を解決する力を身につけてほしい
- 新しく何かをクリエイトする力を身につけてほしい
- 代替案を考える力を身につけてほしい
この授業を受けたことで、現実社会の問題を解決するために、これまで得た知識や経験を生かして、なにをどう使い、どう考えればいいのか。そして、どのように自分たちで結論や代替案を導き出せばいいのか…という「問題解決能力」の一端を身に付けるきっかけになったことを期待しています。
■お話を聞いたひと
学校法人中村学園 中村中学校・高等学校
技術科・情報科 杉村 譲二
大学卒業後、各私立学校で情報科教員として従事。令和4年3月まで勤務していた大森学園高等学校情報科において、「マイクロソフト認定教育イノベーター」を活かした授業を実施。趣味・特技はバスケットボール。大学時代はインカレでベスト4に入賞。
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