【授業のためのICT入門】プログラミング的思考力を育てる
今回は純粋に私がおすすめするネット上のツールのご紹介です。子どもたちのプログラミング的思考力の向上を促すツールで、『ブロックリー・ゲーム – Blockly Games』(https://blockly.games/?lang=ja)というものです。ブロックリー・ゲームはGoogle社のGoogle Blocklyを使って開発された、プログラミングを学べるゲームをウェブ上でプレーできるように公開されているサービスです。
Google Blocklyというのは、開発者向けのブロック型ビジュアルプログラミングのライブラリで、一般ユーザーの私たちが使えるものではありません。例えばアプリの開発者などが利用できるパーツとしてGoogleが提供しているものです。Blockly Gamesは、GoogleがGoogle Blocklyで開発して公開したものなのです。
8種類のゲームが用意されていて、一つひとつのゲームは短時間で取り組めるようになっています。例えば迷路などは、簡単なものからより複雑な処理問題へと難易度が上がる形になっていて、何度でもやり直すことができます。感覚的に言えば、「課題」をブロック型の命令文を組み合わせて解いていく、という感じでしょうか。Scratchなどでブロック型の命令文に慣れている子どもたちは、スムーズに取り組むことができるでしょう。
例えばこの画像は、ブロックリー・ゲームの「迷路」の2問目(1問目は簡単すぎるので……)です。黄色いヒトが、緑のスタート地点から、赤のゴール地点までどう動いていけば到達するのかを、右側のブロックを組み合わせることで解いていきます。最初は組み合わせるだけですが、レベルが上がると使えるブロックの数も指定されてきます。
こちらはレベル8の迷路。みなさんならどう組み合わせるでしょうか。ブロックは9個しか使えませんので、「まで繰り返す(ループ)」や、「もし〇〇なら(if文)」を上手く使っていくことになります。ブロックリー・ゲームは迷路だけでなく、もっと簡単なパズルなどがありますが、題材的にも理科(生物)の知識だったり、音楽や数学の知識が必要になっていて、とても「教材」として使いやすいのです。ただ、残念なことにすべてが日本語化しているわけではないので、そのあたりは工夫しなければならないなと思います。
私はプログラミング的思考というのは、論理的な思考、課題解決に役立つ思考の一つというようにとらえています。プログラマーを育てるための教育ではありません。子どもたちがプログラミング的思考力を身につけるには、やはり課題を解決していくという形が良いのかなと思いますが、それにも順序があると考えています。
まず第1に、アンプラグドプログラミング(パソコンなどの端末を使わずに、プログラミングを学習すること)学習で、プログラミングに必要な「考え方」を学びます。この考え方は、直接コンピュータにふれる前の試行錯誤の段階が大切で、グループワークなどを取り入れながら進めていくことが望まれます。
次に、今回ご紹介したような「課題解決型」のツールを用いた学習です。アンプラグドでも同じようなことをやりますが、今度はそれを、コンピュータを使って解決していくのです。パソコンを使わないで人間同士で行う解決は、当然ですがあいまいで、本当に正しく実行できるかわかりません。そこで、本当にその命令が正しいのか、その組み立てで動くのかについて、コンピュータで検証するのです。そういう意味では、段階を追って課題が複雑になるこのブロックリー・ゲームは、簡単に答え合わせをすることができるのでよいなと思います。
こうした練習をしたうえで、最後にscratchなどのプログラミング言語を使った作品づくりを行います。今度は、課題を解決するのではなく、自らの考えを形にしていくという話になるのです。というのも、子どもたちにいきなりscratchなどを触らせると、ネコ(scratchのキャラクター)が動いたり泣いたりすることが面白くて、そこに夢中になってしまい、意味のある動きやストーリーの組み立てなどに注意を向けるまでに時間がかかります。「何をつくるか」をゼロから考えるのは、何も知識がない状態では難しいのです。
ですから段階を追い、プログラミングで何ができるのか、そのためにはどういう命令を出していったらよいのかをある程度理解したうえで、ではあなたは何を作りますか?という展開にもっていくのが理想的であると思います。また、この方法ですと、様々な教科の要素を取り入れることができるので、総合的な学習としても活用できます。
1回の授業ではなく、(おそらく1回では絶対に終わらないので)1学期、もしくは通年の取り組みとするのも面白いかもしれません。こうした目的でなくても、ブロックリー・ゲームは単純に面白いので、雨の日の休み時間や、パソコンクラブなどで毎回1問ずつ解くといった使い方もできるかもしれません。
この記事を書いたひと
吉田 理子
(よしだ りこ)
1971年生まれ。Windows95発売当時に社会人となり、以降パソコン教室講師やITサポート等の仕事に従事。2005年に企業・学校向けのIT、情報教育を目的とした企業組合i-casket設立。2018年には一般社団法人s-netサポーターズを設立し、主に小中学校にて子供・保護者・教員向けの情報リテラシー、プログラミング的思考に関する講座を行う。そのほか地域ボランティアや主権者教育の活動をボランティアで。趣味は料理と読書。