IT化の進む教育現場で求められるコミュニケーションとは<Vol.1>

2021年1月24日

 昨今のコロナ禍において、在宅勤務が増えた方も多いのではないでしょうか。また子どもたちも外で遊ぶ時間が減り、家にいる機会が増えているようです。当然のことながら家族が顔を会わせる時間も以前より増えているというご家庭が多いでしょう。

 在宅勤務のため、今日も明日も明後日も配偶者が家にいる。子どもも学校や塾以外はずっと家にいる。愛する家族と過ごす時間が増えるということは、本来であれば喜ばしいことです。しかしその一方で、それがストレスになっているという声もよく耳にします。切ない話ですが、無理もありません。なぜなら、これまでに経験したことのない状況なのですから。

 もしかしたら、配偶者が働く姿を目の当たりにするのは初めてという方もいるでしょう。家族と接するときとはまったく違う姿を見て、良くも悪くも影響を受けてしまったり、大切な子どもとの時間も、それが毎日のように続くと、どうしてもダメなところばかり気になって、ついつい怒鳴ってしまったり。挙句の果てには夫婦げんかや親子げんかに発展し、家庭の中が嫌な雰囲気になってしまう。そんな状況に直面しているご家庭も少なくないでしょう。

 そこで問われるのが、家族間における「コミュニケーションの質」です。コミュニケーションには、大きく分けて2種類あります。それは、「他人とのコミュニケーション」と「自分とのコミュニケーション」です。

 今回は「他人とのコミュニケーション」のポイントについてお話します。

 みなさん、ふだん何気なく言葉を発していると思いますが、他人とのコミュニケーションにおいて意外に盲点となっているのは、「話の聞き方」です。話し方と同様、またはそれ以上に聞き方にも質が問われます。その最大のポイントは、ただ聞くのではなく、全身で聞くこと。「耳で聞く」という概念から、「全身で聞く」という概念にシフトしてみてください。

 全身で、と言っても難しいことではありません。大きくうなずいたり、手を叩いて笑ったり、相槌を打ったり、少し大袈裟だと感じるくらい反応してみるのです。たったそれだけで、コミュニケーションの質が高まります。相手は「自分の話が伝わっている」「聞いてくれている」と感じ、心が満たされるはずです。さらに、相手の話の内容に表情を合わせると、よりいっそう満足度は増すでしょう。

 さらに細かく見ていくと、受け取り方にも4つのレベルがあることに気がつきます。

 1つ目のレベルが「跳ね返す」です。いろんな人とコミュニケーションをとっていれば、理解しにくいこと、意見が合わないこと、納得のいかないこと、不愉快なことなど多々あるでしょう。そんなとき、「それはおかしい」「そんなはずはない」「そっちが間違っている」などと、相手のメッセージを跳ね返してしまう人をよく見かけますが、それではコミュニケーションは成立しません。

 2つ目のレベルが「受け止める」です。何か予想外のことを言われた場合、すぐに跳ね返さずに、とりあえず受け止めてみることが大事です。自分とは異なる意見や考え方を、いきなり自分の胸の中に入れることは難しいかもしれませんが、胸の前で止めることくらいはできるはずです。

 3つ目のレベルが「受け入れる」です。一度相手の意見を受け止めることができたら、冷静に客観的にさまざまな角度から見つめてみましょう。すると、「なるほど、そういう見方もあるのか」「へえ、本当はそういうことだったのか」というように、相手の真意に気づくことができ、その結果、素直に受け入れることが可能となるのです。

 4つ目のレベルが「引き受ける」です。引き受けるとは、「受け入れる」がより積極的になった聞き方です。相手が何かを発しているということは、本人が自覚しているかいないかに関わらず、そこには何かしらの「意思」が込められています。そのため、その意を酌むことができるかどうかで、コミュニケーションの深さが大きく変わってくるのです。

多くの人が、コミュニケーションは「会話(言葉)」で成り立っていると思い込んでいます。しかし、実はそれ以上にコミュニケーションは「心理関係」で成り立っているのです。きっとみなさんにも思い当たる出来事や会話があるのではないでしょうか。

 まずは相手の言葉そのものを、ただ受け止めたり受け入れたりするのではなく、「本当は何が言いたかったのかな?」「何が彼にそう言わせたんだろう?」「彼女はどんな価値観なのかな?」などと、相手の本意や、その言葉を選ばせた深層心理を感じ取ってみることが大切なのです。

 もし、親と子、先生と生徒、生徒と生徒が互いの意を酌むことができたら……。教育現場におけるコミュニケーションの質が、格段に高まっていくと思いませんか?

 また、テレワークの普及もあり、Web会議システムの利用者が急増しています。オンラインセミナー、オンライン授業、オンライン飲み会など、オンラインでのコミュニケーションは今後ますます増えていくでしょう。対面でのコミュニケーションならば伝わるはずのものが伝わらないオンラインでのコミュニケーションにおいて、コミュニケーションの質を高めていくことはさらに重要な課題となっていくでしょう。

この記事を書いたひと

岡根 芳樹
(おかね よしき)

ソーシャル・アライアンス株式会社代表取締役社長。若かりし頃は劇団主宰、現在は絵本作家の顔を持つ、発想力豊かな異色の講師。プレゼンテーションやクロージングといったセールスのスキルやノウハウが、部下の育成、生徒の教育、子育てなどに役立つことに気づき、あらゆる分野でコミュニケーション能力の向上・育成を目指す。心理学を応用した実践型ロールプレイング、成果にこだわった人材教育には定評があり、企業研修において高いリピート率を誇る。またかねてより学校教育、子どもへの教育が重要との考えを持ち、中学校や高校、大学、学習塾などでの講演活動も精力的に行っている。YouTubeチャンネル「おかねちゃんねる」を開設。